連帯の基盤を探る:富永京子『みんなの「わがまま」入門』

 

みんなの「わがまま」入門

みんなの「わがまま」入門

 

 社会運動研究が意味論的志向を強めているように感じている。それらは運動をしている一人一人に寄り添う視点を強く持っている。それは政治過程論的視点で運動を見がちな自分としては欠落しがちな部分でありがたいのだが、一方で、同じ活動をしている人の中にさえある種の分断が生じることにも気づく。それは本書でいうところの「個人化」の帰結でもあるのだろう。

 自分と違う他者と連帯することが どんどん困難に感じられる中、本書が試みているのは「連帯の基盤を探る」ということではないかと感じた。分断のベクトルが強まる世界の中で、しかし多くの人が疎外感にも悩まされている。そのことに対する抵抗として本書が書かれたという私の読みが間違っていなければ、それは執筆者である富永の「一人社会運動」なのだろう。

 私も連帯の基盤を模索すべく今日のゼミで、「もやもや」について語り合うことにしよう。