On-Line Candidate Evaluation Model

Milton Lodge and Marco Steenbergen, with Shawn Brau. 1995. "The Responsive Voter: Campaign Information and the Dynamics of Candidate Evaluation." APSR,89,2:309-326.

Controversies in Voting Behavior

Controversies in Voting Behavior

に第13章として収録.

要約

 サーヴェイ・データによる投票行動研究は,有権者の政治的知識のなさを強調するが,そこには有権者が記憶に基づいて投票行動を行うという前提がある.しかし,自分の行動選択の根拠について記憶することと,政治的なメッセージに対応して行動を選択することの間には乖離がある.
 この論文は,有権者が政治的なメッセージに反応して候補者評価を形成し,それに基づいて投票するというOn-Line Candidate Evaluation Modelを提唱し,サーヴェイではなく実験によってモデルの妥当性を検証している.結果はモデルを支持した.つまり有権者は政治的な情報について記憶していなくても,そのメッセージに基づいて候補者評価を形成している.

コメント

・基本的な主張については納得.投票行動選択という1つのイヴェントのData Generating ProcessのモデルとしてOn-Lineの方がmemory basedなモデルより優れていると思う.
・ただ被験者はnonrandom sampleで,白人が92%というのはExternal Validityを評価する際にマイナスか.
・実験のプロセスが結構おおがかりなので,それに辛抱強く付き合ってくれる被験者という段階でなんらかのフィルターがかかっていないか?
・実験に用いている情報はhypotheticalないわば架空のものであり,しかもそこにある情報は所属政党を含めた候補者のプロフィールと争点態度だけである.彼らのモデルの有効性を検証するには都合がいいかもしれないが,これは現実にこのような情報処理が選挙で行われていることを主張する上で十分か?
・説明は候補者評価までで終わっている.投票選択が候補者評価をそのまま反映するとは限らない.この点はこのモデルを日本で応用しようと思ったときにとくに重要になるだろう.
・「サーヴェイより実験」という風に読めてしまうけれど,survey experimentによる両者のいいとこどりはできないか?
・日本では実験手法による投票行動研究はまだ少ないので,Lodgeらの研究はあまり認知されていない.つまりここにニッチがある.