- 作者: 佐藤俊樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/06/01
- メディア: 新書
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本書は非常に魅力的な本である.今はやりの表現をするならsexyである.たとえばこんな1節に私はシビレる.
「私は未来を予言するつもりもないし,自分の正しさを布教する気もない.素描はあくまでもたたき台だが,あえてそれをやるのは,暗い顔をしてなげやりになったり,ことさらに危機を煽りたてるのをみるのに,いささか飽きたからである.(中略)もちろん日本の経済状態が良くなれば,あるいはたんにアメリカ経済の1人勝ちに翳りが出ただけでも,昨日まで深刻ぶっていた人々はまた陽気に騒ぎだすだろう.だが.むしろ,そういう安っぽい自尊と自卑に私はもう飽きたのだ」(pp.13-4).
議論の明快さ,データのプレゼン手法などなど非常に参考になる.あとがきによれば佐藤さんのお父さんも電電公社だったということで,その点でも親しみがわいた(しかし佐藤さんは中高一貫私立.私のほうは親から常に「上の学校行きたきゃ,うちは貧乏なんだから公立以外ダメ」と言われて育ち,勤務先以外の私立学校を知らない点と出身大学では異なるが).
しかしこの本,薄くて軽い割りにテーマが重い.「努力すればナントカなる」社会は終わり,今や「努力してもしかたない」社会だというのだから.この本を学生さんに推薦する気になる教員はあまりいないだろう.目の前の学生にディスインセンティブを与えるようなものだからだ.
もちろん本書の主張に対する批判は出ている.手っ取り早いレビューは盛山和夫による批判とそれに対する佐藤自身のリプライを載せた
- 作者: 「中央公論」編集部
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/03
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機会と結果の不平等―世代間移動と所得・資産格差 (MINERVA社会学叢書)
- 作者: 鹿又伸夫
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: 単行本
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この本の主張の真偽はともかく,しかし学生たちを見ているとこの本の主張に比較的忠実に行動しているように見えることがある.つまり学力競争から降りるポイントが,我々の頃より早まっているような気がするのである.
学生の学力低下が問題になる昨今だが,教えていて感じるのは(体感という名の偏見に過ぎないかもしれないが),全般的な低落であるよりもむしろ2極化で下の極の比重が増しているということである.上の方の答案のレベルは落ちているように思えないが,下のレベルの答案は誤字脱字,てにをはの誤用などほとんど日本語の態をなしていないようなものが出てくるが,その頻度が増えたように思える.そういう層はかなり早期に勉学から撤退し,もちろん教科書など買わず,いかに低い労力で単位を獲得し,卒業するかを目指している.そういう学生に対して「大学での勉学が社会におけるあなた自身のsurvivabilityを向上させますよ」という説得ないし啓蒙に成功しないと,彼らは我々に注意を向けてくれない*1
- 作者: 佐藤俊樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2000/06/01
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たとえば私は2年間アメリカで在外研究の期間を得た.その際,学齢期の子供も連れていった.結果として子供たちは英語を習得し,日本での学力競争におけるアドヴァンテージを手にしている.これはもちろん本人の努力の賜物でもある.しかし父親の仕事による外部経済という部分を否定できない.同じような経験を持つ研究者の子弟が,日本で生まれ日本の教育しか受けて来なければ入ることが相対的に難しい*3海外の大学にどんどん留学し,自分のキャリアを研究職に求めている.その結果,地位の再生産が起こる.我々政治学者は政治家の家業化を「2世議員」として指摘するけれど,その政治学者の2世比率も上昇傾向にあるように思われる.
マイケル・ムーアはG・W・ブッシュ現アメリカ大統領を,オヤジのコネでエール大学に入ったバカ息子とこき下ろす.
- 作者: マイケルムーア,Michael Moore,松田和也
- 出版社/メーカー: 柏書房
- 発売日: 2002/10
- メディア: 単行本
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- 作者: マイケル・ムーア,黒原敏行
- 出版社/メーカー: アーティストハウス
- 発売日: 2003/11/29
- メディア: 単行本
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- 作者: 栗林輝夫
- 出版社/メーカー: キリスト新聞社
- 発売日: 2005/07/01
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佐藤さんの『不平等社会日本』がステキだと思う箇所として,他にもこんな1節がある.
「要するに,私はただ,成功といえる成果をあげたすべての人が,胸をはって,『自分の実績だ』といえる社会でありたいだけだ.生まれによる差がそのまま一人一人の実績につながるならば,それは正当な競争ではない.ただの出来レースである.出来レースで勝っても,嬉しくないし,誇りにも思えない.」(p.175)
「出来レースでなくするためには,社会のしくみの上で,個人個人の力のおよぶこと/およばないことをできるだけ正しく区別する必要がある.そして,本人の力によらない有利不利や幸福不幸を解消するのが不可能ならば,それを補償するしくみを維持し,格差の拡大再生産をできるだけ防ぐ」(P.176)
私の脳裏に初めて佐藤俊樹という名を強烈に印象付けたのはやはり1993年に出版されたこの本
- 作者: 佐藤俊樹
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 1993/11/01
- メディア: ハードカバー
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ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する (講談社選書メチエ)
- 作者: 佐藤俊樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/09
- メディア: 単行本
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