エリートはあてになる?

論争・中流崩壊 (中公新書ラクレ)

論争・中流崩壊 (中公新書ラクレ)

ちょっと前に読了してたんですが.本書に収録されている論考の中で,御厨貴さんと櫻田淳さんのものは階級社会化の肯定と,エリート教育の重要性を主張するものという位置づけになります.
 でもエリートは日本が沈んでもよその国で生きられるんですよね.英語くらい出来るだろうし.そういう存在に日本国への忠誠を誓わせるってのは結構難しい.それをなんとかするのがエリート教育なんでしょうけど具体策あるのかなあ.エリートは国境を越えてエリート同士で連帯しやすい.同じ国の同じ言語を話すノン・エリートとよりも別の国の英語を話すエリート同士のほうが話があったり,シンパシーを感じたりするわけです.そういう存在がお国のために自分を捨てるようになるためには,よほどの仕掛けが必要でしょう.
 戦争になって戦場に行くのは結局貧乏人の子供というのは,どこの国でもそう.戦中の日本だって金持ちの息子やエリートの息子はやばいところにいかずにすんでたりする.アメリカだってクリントンは兵役逃れをしていた.私がいたミシガンで言えば,軍のリクルーターはAnn Arborのhigh schoolには来ず,所得の低い住民の子供を狙ってDetroitやYpsilantiのhigh schoolに行って新兵を探す.軍務を終えたら大学に行けるよと囁いて.高校卒業してもろくな仕事がなければ,軍に行かざるを得ず,そして戦場に行かされる.そういう人たちに愛国心を鼓吹し,国のために戦うことを賛美する.そういう社会に日本も近づいているんですかねえ?